そのうち、押し込めるように抱えていた怒りすらわかなくなり、いま、無になってしまいました。

 なにも言葉が出てこなくなり、感情は消えそうです。

 アイドルが好きでアイドルに支えられて来たのに、アイドルに関することで感情が無になってしまうなんて、あまりにもむなしい。だってこんなこと、あまりにもバカげていて、悲しくて、むなしすぎる。推しているグループのインストアイベントに行く気力がなくなってしまいました。

 ひさしぶりにモーニング娘。の『雨の降らない星では愛せないだろう?』を聴きました。何回もリピートをし、アイドルがわざわざ「平和であろうよ」と歌う意味についてぼんやりと考えます。安いイヤホンなので音圧はカサカサ、声だけがやけに際立って聞こえます。

 真夜中は明け方になり、カーテンのすきまからは青白い空が少し見えました。「当たり前のことをほんとうに信じて声に出してもらうことの安心感」をもらっていることに気づきました。

 言葉に出していないと、わたしたちはすぐに忘れてしまいます。

 自覚がないまま、どんどん忘れていってしまいます。

 「仲良く生きていこう」「平和であろうよ」という当たり前のことを、ときどき信じられなくなったり忘れてしまったりするわたしたちは、それを笑顔で聞かせてほしい。そうしたらまた思い出せるから。

 だからそのためには、アイドル本人が幸せにアイドルをしていてほしい。

 わたしたちはアイドルから勝手に幸せをもらうから、だからアイドル本人が幸せでいてもらえるような応援をしたい。

 NGTのあるメンバーのSNSは、批判コメントが埋もれてしまうようにと、愛のあるファンのコメントがそれを上書きされていきました。

 その様子を見ていたら、ふと、推しグループのメンバーが、Instagramでファンの方が褒め言葉の意味で書き込んだ「もうアーティストですね」というコメントに、「アーティスト? アイドルだよ️」と返信をしていたことを思い出し、その美しい矜持に泣けてきます。

 幸せでいてほしい。

 わたしはいま、むなしさに慣れてしまわないように、悪意に流されてしまわないように、自分を自分にとどめておくことで精一杯です。

愛せない日常と夜中のイヤホンで流れるアイドル

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