■もっとステキな女性と出逢えるんじゃないか
同じように７０歳になって気がついたこと、年取って良かったと思えることがいくつかあります。
まず、嫌な相手とは会わなくてもいいやと思えるようになったことですね。だから年賀状も、友と呼べる人、本当に出したいと思う人にしか出さなくてよくなった。これって、楽ですよ。僕はこれを“心の断捨離”と呼んでいます。
２つ目は、“心の預金通帳”。印鑑も身分証明もいらない、自分の心の中で宣言すれば、その場で口座が開設できる通帳。人が喜ぶことをすれば、預金残高はどんどん増えていくし、逆に嫌なことをすれば減っていく。
しかも、７０歳を超えると、貯めていたものが自動的におりてきますから、貯めれば貯めるだけ、幸せな日々を送ることができるのです。ただし、ひとつだけ注意してほしいのは、良いことをした後で、周りに自慢しないこと。「オレ、今日、良いことしたんだよな」と吹聴すればした分だけ、高い手数料を取られるのでご注意ください。
そして３つ目は、女性に感じるロマンのカタチです。大きな胸にも惹かれる。知的な人もいいかも。たまには、ふくよかな人もーー若いときは、逢う女性すべてに心を奪われますが、それでいいんです。女性にロマンを感じなくなったら男はダメ。生きている意味がない。
ーーもっとステキな女性と出逢えるんじゃないか。
息を引き取るその瞬間まで、僕もそう思い続けていたいと思っています。ただ、７０歳を超えると、いろんなことが収斂され、本当の自分のタイプが見えてきます。
もっと言うと、何が何でもこの女を抱きたいという邪な煩悩は消え、食事をして、軽く一杯飲んだ後は、「じゃあ、また、明日！」と笑って手を振ることにもロマンを感じられるようになるはずなんです。
南こうせつ（みなみ・こうせつ）
大分県出身。１９７０年にデビュー。直後に「かぐや姫」を結成し『神田川』『赤ちょうちん』『妹』等、数々のミリオンセールスを記録。解散後もソロとして『夢一夜』などヒット作品を発表。現在は九州で田舎暮らしを実践し、一個人として自然に向き合う暮らしの中で独自の価値観を構築し、多くの共感を得ている。今年デビュー５０周年を迎え、５年ぶりのオリジナルアルバム、ベストアルバムを始め、１５年ぶりにエッセイ本も出版。５年ぶりの「サマーピクニック～さよならまたね～」も、９月に福岡の海の中道海浜公園で開催決定。７０歳を迎えた今もなお、精力的にコンサートを中心に活動している。
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