■雇用延長や再就職も

 高齢者雇用安定法第9条では、定年を65歳未満にしている事業主に対し、「65歳までの定年の引き上げ」「65歳までの継続雇用制度の導入」「定年の廃止」のいずれかの措置を実施することを義務づけている。定年後の働き方で第一の選択肢となるのは、まずは「雇用延長」だろう。

「再雇用を機に、それまでの管理職から、20~30代のときに最もやりがいを感じていた営業職の現場に戻してもらい、週4勤務ながら、バリバリの営業マンとして外回りの日々を過ごすようになり、気分も若返りました」(63・事務機器メーカー勤務)という成功例もある。だが、その一方では、こんな話もある。「同じ仕事内容でも給与が大幅に下がったり、正社員から契約社員にされたり。また、やりがいのない業務に回されるなど、その現実と折り合いをつけるのに苦労する人も少なくないようです」(社労士)

 では、新たな職場に「再就職」する場合、その実情とはどのようなものなのか。ハローワーク飯田橋で求人リストを見ると、運転手や介護、工事などの交通整理、マンション管理や清掃、飲食のホール・厨房など、スキルがなくても取り組める仕事だけでなく、工事技術や不動産販売、ソフトウェア開発など、時給の高い求人もあり、元気とヤル気さえあれば十分に仕事はありそうだ。採用のポイントは、どこになるのか。「ハローワーク飯田橋」の担当者に話を聞いた。「再就職では、それまでのオフィス勤務から、現場の仕事が多くなりますが、それでも継続してやっていく意思があるのかが、大事なポイントだと思います」

 定年後の高齢者を対象とした人材派遣と就職斡旋を行う「株式会社  高齢社」の代表・緒形憲氏は、決して甘くないシニア採用の現実について、こう話す。「定年後の再就職に大事なことは、6つ。(1)過去の肩書で威張らない。(2)仕事に使命感を持つ。(3)気に食わないことも我慢。(4)頼まれたら返事を必ずする。(5)約束は実行する。(6)頭は下げるためにある。うちでは、これをパンフレットにもつづり、気持ちの整理と入れ替えが必要であることを、まずは認識してもらっています」

 同社では、主に東京ガス関連の新築マンションの内覧会、受付、工事点検などで20業種。他に、レンタカー受付、マンション管理、家電サービス補助などで20業種を扱っており、登録者は60歳からで、69~71歳がピークで、最高齢は84歳までが、元気に働いているという。

「週3日勤務で月収は10万円ほど。社会との関わりを持ち、若い人に感謝されながら働くのに、ちょうどいいようです。最高齢の84歳の人も、“仕事をしていて知らないうちに、この年になってしまった”と元気いっぱいですからね」(前同)

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4