■北関東に高速道路が相次いで開通

 同様のことが北関東でも言えて、東京までのアクセスは容易なのに、支出面で驚くほど抑えられるのだ。しかも、ここ数年で北関東に高速道路が相次いで開通。東京までの移動がさらに便利になったほか、隣接地域へのアクセスもかなり楽になった。「海から離れると津波の被害を受けないですし、住宅が密集していない分、災害時に延焼被害も少ないなど、防災面でも安心できます」(前同)

 実際、表でも分かるように、住みやすい街の上位は大都市周辺に集中している。また、北関東や高速道路が通っている自治体が多いことが分かる。地方では県庁所在地が多いが、これは働き口が多く、医療体制が整い、公共サービスなどもしっかりしているから。

 とはいえ、都市周辺でなくても住みやすい街はある。たとえば、今回トップになった石川県能美市だ。日経新聞の『シニアに優しい街』調査では医療・介護偏差値が全国1位、総合でも全国5位にランクイン。地元紙記者は、「もともと九谷焼の街として知られていたが、最先端企業や上場企業の誘致・進出が続き、県内でもトップクラスの裕福な市になった」と話す。こうした経済の活性化が高齢者も含めた雇用創出につながり、さらに、公共サービスなどの充実をも導いたという。「山からはきれいな河川が流れ、海にも近い。自然豊かな環境も高齢者に優しい街の一因です」(前同)

 3位の別府市は、全国的に有名な温泉観光市であるため、財政や経済が豊かで、これに派生する高齢者の仕事も多い。また、医療機関が整い、市民が手軽に温泉を楽しめることもあり、上位にランクされた。

 老後も安心して住める街を大まかにまとめれば、まず大都市周辺のトカイナカ。次に医療や交通が発達している地方の県庁所在地や中核都市。続けて、地場産業が栄えて経済情勢が良い市町村、ということになる。ただし、自分の生活状況や経済状況によって居住性で求める部分が異なってくるのは当然のこと。自分でも調べることが大切だ。さらに、最近は福祉サービスや高齢者生活の支援に注力している自治体もかなり増えている。「シニアがうれしいサービスの自治体」の表にまとめたように、タクシーチケットの配布、無料配食サービス、はり・きゅう・マッサージの助成など、まさに百花繚乱。人によっては、移住の決め手となる可能性すらあるといえよう。

 読者の皆さんも老後の人生を悠々自適に暮らせる“シニアの楽園”を、じっくりと探してください!

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