■倉本作品にある“リアル”とは

――倉本先生の作品は、“高尚”な作品だと思って見ていると、結構ぶっとんだ“漫画的”なエピソードもたくさんありますね。「公平」(風間俊介)が「しの」(清野奈菜)と殴り合いになったときに、胸を触って興奮してしまうシーンとか。

 倉本作品は『北の国から』がトータルで考えると“文学作品”のような印象が強いと思うのですが、よくよく見返してみると、人間だったら誰しも感じるような“下世話さ”なども、ふんだんに描かれています。

 私もそういう下世話なところが大好きなので、「下ネタかよ」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、でも、それが“リアル”じゃないのかと思うんですよね。しのと公平との出来事も、2人のその後に待ち受けている運命の中では、あの殴り合いは必要だった。

『郷』でも、「ロク」(橋爪功)は頻尿症で悩んでいる。年齢的には、ごく身近な話ですから、下世話ですが、それを避けずに描いていく。その下世話の先に、でっかいでっかい感動のシーンが待ち受けている。それが倉本聰作品の約束事というか。お客さんとの信頼関係なのかなと。

――主人公のシナリオライター菊村栄も、人間くさいキャラクターですが、倉本先生ご自身に近いのでしょうか?

 よく、主人公のモデルは石坂さんですか、それとも倉本先生ご自身ですかと聞かれるんですが、もちろん違います。菊村栄という架空のキャラクターです。

 もちろん投影する部分もあるそうですが、これがそのままご自身ではないということではないとおっしゃっていますね。

 若い女性と仲良くなってドキドキしたりする人を見て、面白いと思ったり、親近感を持つってことは「人間らしい」ということだと思うんですよ。

 この作品にはスーパーマンは出てこないんです。例えば、「秀さん」(藤竜也)というキャラクターは、誰もが憧れる唯一無二の大スターで、髙倉健さんのようなイメージなんですが、スーパーマンかといえば、何を言ってるのか分からなかったりする。それが人間らしくて、ユーモアになっているのかと思います。

――老いによる衰えや、認知症の症状を、悲劇としても喜劇としても描いていかれていますね。

 松原智恵子さん(74)演じる「九重めぐみ」が少しずつ認知症になって、オナラをブーブーするようになるんです。もう、考えられないんですよね。これまで「お姫様」を演じてきた松原さんが。でも、倉本先生はそれをきちんと書くし、松原さんはそれをきちんと演じるわけですよ。

 オナラをブーブーする、ということだけ取れば、下品だし、下卑た笑いになるのかもしれないけれども、でもそこにある、リアルな人間の苦しみとか、悲しみのようなものが、その後に感動となって帰ってくるんですから。やはり、倉本聰作品はすごいなと。

『北の国から』なんて、UFOが出てきたりしますし。倉本先生は、そういうヤンチャなところをいっぱい持っているんですよ。だから、倉本聰作品の集大成と公言されている『やすらぎ』シリーズの中にも、そういうところを全部ぶっこんでおられますよね。

――今作は、開始早々、レギュラーの「大納言」(山本圭)が亡くなり、衝撃的でした。

 大納言は残念だったと思うんです。前作では石坂さんとミッキーさんとのトリオで釣りシーンが、一つのお決まりのシーンで、その「合成」も含めて話題になりました。

 でも、大納言と八千草さんは、タイトルバックに、ずっと残っています。今後、ずっと見ていただければ、また大納言には会えるかもしれません。

 中込卓也プロデューサーには、【後編】でもドラマの魅力を語ってもらう!

 

『やすらぎの刻~道』
テレビ朝日(月~金)午後12時30分~12時50分
BS朝日(月~金)午前7時40分~8時
TVerでも配信中。

『やすらぎの刻~道』シナリオ集1~2巻、双葉社より発売中

超話題“タブー上等”昼ドラ『やすらぎの刻~道』Pが語る現場裏話!

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