■スペインカゼは推定死亡者数5000万人

 この強力な感染力で、人類は過去何度も痛い目にあってきた。被害が大きかったのは、1918~21年に猛威を振るったスペインカゼ(推定死亡者数5000万人)や1957年のアジアカゼ(同100万人)、1968年の香港カゼ(同300万人)や1977年のソ連カゼ(同100万人)だ。カゼと名前がついているが、これはすべてインフルエンザウイルスによるもの。

 ちなみに、史上最も致死率が高いとされたペスト(黒死病)でも推計5000万人の死者数だから、インフルエンザがいかに怖いかが分かるだろう。

 医療ジャーナリストの牧潤二氏によると、「過去に大きな被害をもたらしたインフルエンザは、すべて“新型”のインフルエンザウイルス」だという。

「インフルエンザウイルスは遺伝子の形を少しずつ変えているんですが、何かの拍子に大きく変化することがあります。これを“新型”と呼んでいるんですが、新型インフルエンザウイルスは人が持っている免疫システムでうまく対応できないため、感染が広がりやすく、爆発的な大流行(パンデミック)になりやすいんです」(牧氏)

 実は、2009~10年にもメキシコで、豚由来で大きく変化した新型インフルエンザウイルスが出現し、100人以上が死亡したことがあった。

「日本でも関西の高校生が感染するなどして話題になったんですが、幸い、この新型インフルエンザは日本で大流行しませんでした。しかし、今後、より感染力や繁殖力が強い新型が出現する可能性があり、油断ならない状況です」(前同)

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