■新型インフルエンザは薬が効かない!?

 新型インフルエンザは、これまでのワクチンが効かないので、新たにワクチンを作る必要がある。この生産が間に合わないことになると、爆発的に流行する恐れがある。なお、読者にも「今年はすでにインフルエンザワクチンを打った」という人がいるだろうが、実は、これは以前流行したインフルエンザのワクチンである。もし、型が大きく違うウイルスに感染したら、これらのワクチンはほとんど効かないのだが、それでもメリットはあるという。前出の渡會院長が次のように語る。「うちの患者さんの中にも“ワクチンを打ったのにインフルエンザにかかった”という方がいるんですが、事前にワクチンを打っておくと、かかっても高熱にならないなど、重症化しない傾向があるんです」

 前出の木村医師も「ワクチンを打ったからといって、インフルエンザを100%予防できるわけではない」と前置きして、次のように続ける。「米国の調査で、65歳未満の健常者はワクチンの接種で発症を70~90%減らすことができ、65歳以上の高齢者も肺炎などによる入院を30~70%ぐらい減らすことができると報告されています。ワクチンを打つとインフルエンザが発症しにくくなることは、この調査でも明らかなんですが、ワクチンの作用期間は約5か月ですから、毎年打つ必要があります」

 カゼやインフルエンザにかかると、市販薬や病院の処方薬で対応することになるのだが、ここにも落とし穴がある。ドラッグストアなどで売られているカゼ薬を服用して、重篤なアナフィラキシーショックを起こすケースがあるからだ。アナフィラキシーショックとは、アレルギーの成分が体内に入ることによって、体内の臓器などが激しい急性のアレルギー症状を起こすことだが、最悪の場合は死に至ることもある。ちなみに、平成19年から年までの5年間で報告されたアナフィラキシーショックの事例は、総合感冒剤が12件、解熱鎮痛消炎剤(熱冷まし)が4件、鎮咳去痰剤(咳止め)が1件ある。

 アナフィラキシーショックの症状としては、薬を服用後、急に冷や汗が出たり、息がしにくくなる、胸が痛くなる、皮膚の痒かゆみやただれ、あるいは手足や唇の痺れ、めまいなどの神経症状などがある。市販薬とはいえ、服用後はこうした症状が出ないか、十分に注意する必要がある。処方薬であるイナビル、タミフル、リレンザ、最新薬のゾフルーザなどのインフルエンザ薬も決して安全というわけではない。「インフルエンザ薬は吸入式(リレンザなど)だったり、5日間の連続投与が必要(タミフルなど)なため、使い勝手が悪かったのですが、最新のゾフルーザは経口のうえ、1~2回の服用で効果があるため、うちのクリニックでも使っています」(渡會院長)

 だが、こうしたインフルエンザ薬で、異常行動を起こすという報告が相次いだことがある。「最初はインフルエンザ薬による副作用が疑われ、マスコミでも大きく取り上げられたんですが、その後、インフルエンザによる高熱によって引き起こされたケースも少なからずあるとされ、いくぶん鎮火しました。しかし、処方薬、市販薬に限らず、薬には副作用がつきもの。こう思って、薬を服用したら自分の体の状態を注意深く観察し、もし異変を感じたら、すぐに医療機関で受診することが大切です」(前出の牧氏)

 また今年11月、ゾフルーザを服用した際に体内にでき、薬が効きにくくなる「耐性ウイルス」が、通常のウイルスと同程度の感染力を持ち、症状を引き起こす能力があると、東京大教授らのチームが英科学誌に発表し、話題を呼んでいる。インフルエンザにかかったら、他人に近づかないように心がけることが肝要だ。

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