■時間をかけてその作品に取り組む。それがすごく大事
彼がやりたい本読みは、まず自分のセリフを見て覚えて、それから口に出す。それで、こちら側は、相手のセリフを聞いてから、自分のセリフを覚えてしゃべる。つまり、相手のセリフをしっかり聞いて、相手に伝えるのが「本当の本読み」なんだ、というわけです。
そこからクランクインまで、何百回も二人で本読みをしましたね。いろんな場所で、それこそ、うちの近所のピザ屋さんとかでも(笑)。
また、古舘さん主催によるワークショップもやりました。共演者、スタッフ、山下敦弘監督、脚本の野木亜紀子さんまで参加して、“俳優はどうあるべきか”みたいなところから、とことん話し合った。
そうやって、ついにクランクインを迎えてみると、やっぱり、これまでと全然違うんですよ。現場に行って、相手役と会話を交わすだけで、あるいはそこにいるだけで、もう“役”になっている。だから自然と感情も沸き上がってくる。気持ちを作らなくとも、その場に入り込めるんですね。
どういう形であれ、時間をかけてその作品に取り組む。それがすごく大事なんだなと、今回、本当に気づかされた。全部の作品というわけにはいかないかもしれないけど、今後もできるだけ、たとえば僕が主演する作品では、打ち合わせの段階から参加して、こんなふうに本読みをしていきたいですね。
そうやって仕事をして、子どもたちが巣立ったら、奥さんと海外旅行をして、稼いだお金をすべて使い果たす! それが今の夢です(笑)。
滝藤賢一(たきとう・けんいち)
1976年、愛知県生まれ。1998年から2007年まで「無名塾」に在籍し、舞台を中心に活動。2008年映画『クライマーズ・ハイ』の新聞記者役で注目を集め、以来数多くの作品に出演。主な出演作は、映画『64~ロクヨン~』『孤狼の血』、テレビドラマ『半沢直樹』『重版出来!』『俺のダンディズム』、NHKテレビ小説『半分、青い。』など。今年のNHK大河ドラマ『麒麟がくる』には足利義昭役で出演。
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