■柄本佑にだまされてはいけない
主演の末井氏を演じた柄本は、本当に不気味。薄く笑い、ねっとりと動乱の時代を渡り歩く。ダラダラと画面から流れ出てくるエログロな空気と、柄本の人を食ったような「嫌な横目づかい」が圧倒的だった。内容的に決して気持ちがいいとは言えない世界観だったが、柄本によって引っ張られ、感動すらしてしまった
あの映画が呪縛のようになっていて、今、柄本がどんな好青年の役を演じても「いかんぞ! 柄本佑に夢中になると運命を狂わされる。しかしそれもアリか?」と悶えるクセがついている。ドラマ『知らなくていいコト』もそうで、柄本が正統派なイケメンすぎて逆に怖い。今後、とんでもなくバイオレンスな展開がドカンと来るんじゃないの? と身がまえている。いや、期待してしまっている!
もはや褒めているのか、けなしているのかよく分からない記事になったが、彼が魅力的なのは間違いない。そのうえで「男前な役もいいけど、ヤバいままでいて」と願ってしまう。つくづく歪んだファン心理を膨らませる罪な俳優。これぞ柄本佑である。(田中稲)