出演者は距離をとっているけれど、スタッフとの距離は近くなってしまっている。視聴者に注意喚起をしつつも、普段どおりにスタッフが運んだ食べ物で食レポをしている。外出自粛のメッセージを発しつつも、自分もこうやってテレビ局に足を運んでしまっている。なんだかおかしいとは思うけれど、おかしいと言うことがおかしいという雰囲気もある――。

 テレビの枠の内側には映らない、その少し外側で起こっているおかしなこと。指原はときに、こうやってテレビに直接映らないテレビの不思議を機敏に察知し、言及する。

 さまざまな人が繰り返し指摘していることだけれど、”アイドルらしくないアイドル”がアイドルの存在様式の中心にきてしばらく経つ。いるだけで周りがアイドルと呼んでくれる時代から、自分がどのようにアイドルをしているかを周りに表現する時代へと変わった。そんなアイドルとしての生存戦略を本人が語り示すことも、アイドルというエンタメの一部になった。その行き着いた先に、AKBの総選挙があった。

 その総選挙で3連覇、通算4回の得票数1位を獲得した指原。2010年代のアイドルの象徴的な存在である彼女は、コロナ禍でのテレビ収録について「いつまでやんの?」と言った。その状況察知の鋭さを、改めて思う。

(文・飲用てれび)

テレビの中の女たち

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