■犬飼の出世作『ビルド』の魅力

『ビルド』は、「10年前、火星で発見された“パンドラボックス”が巨大な壁“スカイウォール”を出現させ、日本が『東都』『北都』『西都』の三国に分断され、しかも東都以外の2国は過激派で、いつ戦争を仕掛けてもおかしくない状況」

 という、歴代でも群を抜いて危機的状況な世界観の作品。

「科学の発展の果ては戦争なのか」というテーマもあり、中盤からは三国間で戦争が始まってしまい、劇中で仮面ライダーは軍事兵器として扱われたり、殉職者が出たりと、非常にハードな作風となっていた。

「犬飼は記憶喪失の物理学者・桐生戦兎(きりゅう・せんと)を演じていました。記憶がないため“正義のヒーロー”がアイデンティティとなっていて、平時は明るく振舞っているんですが、その分アイデンティティが揺らぐとかなり狼狽してしまう、繊細なキャラを見事に演じ切りました。終盤、記憶を取り戻した際や悪の怪人に憑依された際も指先や声のトーンなどを絶妙に変えていて、非常に高い演技力を見せています」(前出の特撮ライター)

 特にファンの間では、第21話『ハザードは止まらない』の演技が高く評価されているという。

「戦争が始まり、仲間を護ろうと戦兎はやむなく強化アイテムを利用するんですが、制御できずに敵怪人(人間)を殺害してしまうんです。それで心が折れて廃人同然となってしまい、10歳ほど老け込んだようなゲッソリとした表情で泣きながら墓参りする場面は、よく放送できたな、と思えるくらい凄惨でした。裏を返すと、それだけ犬飼の演技が優れている、ということです」(前同)

 俳優業は14年からスタートしており、『ビルド』出演前から多くのドラマに出演していたが、『ビルド』で初主演を務めて以降は、さらに上り調子だ。19年には広瀬すず(22)主演の『なつぞら』で、わき役だがNHKの朝ドラにも出演を果たした。

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