■森七菜が支えた放送再開

 この心地よい再始動を支えたのは、間違いなく梅を演じる森七菜の演技だ。梅は内向的な文学少女で、実はセリフが多くない。それでも森は仕草や目線、微妙な表情で梅の心の揺れ動きを丁寧に表現していた。10代らしい爽やかさがありながら、堂々とした存在感があるのも印象的だ。

 森は2019年に注目度を高めた今最注目の若手だ。まずは菅田将暉(27)主演『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(日本テレビ系)のオタク気質な優等生役で話題に。ご存知のように、『3年A組』は今田美桜(23)や富田望生(20)など、今をときめく人気女優がブレイクするきっかけとなった。さらに新海誠監督のアニメ映画『天気の子』では、ヒロインの声優に抜擢され、高評価を得た。

 2020年に入ってからもその勢いは止まらず、岩井俊二監督の映画『ラストレター』では、松たか子(43)演じる主人公の裕里の高校時代、そして娘の颯香と一人二役をこなした。この作品は広瀬すず(22)とのシーンも多かったが、若手女優のトップランナーである広瀬に臆することなく、みずみずしい素直な演技を披露してみせた。

 そしてついに、10月からは森が初めて主役を演じるドラマがスタートする。『この恋あたためますか』(TBS系)は、森演じるコンビニのバイト、井上樹木とコンビニ社長の浅羽(中村倫也/33)との恋が描かれるという。清楚な女の子役が続いた彼女が、ラブストーリーをどう演じるか楽しみだ。

 この作品は佐藤健(31)と上白石萌音(22)が好演した『恋はつづくよどこまでも』、多部未華子(31)主演した『私の家政夫ナギサさん』と、ヒット作連発中の火曜10時枠で、周囲の期待も高いはずだ。しかし『エール』で胸を打つ恋心を表現した森七菜の芝居は、胸キュンドラマ枠でも十分、通用するだろう。本格ブレイクも大いにある。

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