浜崎あゆみの半生を描いた小説を原作とする『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日系)は、トンチキなドラマだ。大映ドラマに比較されることもあるそれは、ベタなストーリー展開やセリフなどが注目され、SNSなどを中心にツッコミの対象となっている。登場人物については“個性豊かな”と形容されている記事も目にするが、もっと正確に言うべきだ。素っ頓狂なキャラクターたちである。

 で、そんなキャラクターたちの中で特に注目を集めているのが、田中が演じる姫野礼香である。エイベックスの現会長・松浦勝人氏をモデルとしたマサの秘書で、彼に好意を寄せる礼香。マサの心がアユに傾くのを阻止するため、さまざまな謀略をめぐらす。

 なぜ、マサが彼女をそばに置いているのか。なぜ、眼帯をつけているのか。秘書の仕事はいつやっているのか。視聴者のそんな疑問をよそに、彼女のマサへの一途な思いは狂気へと高められてゆく。特に第3話、アユと対峙した際に発した「許さなーーーい」という静かな絶叫は、見る者に強い印象と、笑いと、なんでこんなの見てるんだろうという疑問を残した。

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