そして迎えたアイドルグループBiSのオーディション。その面接で彼女は”穴”を狙った。アイドルのオーディションで人は清純派を演じてしまいやすいと分析し、それとは逆をいった。

 提出したオーディション用紙の文字はガッツリとレタリングし、自己PRのところに「アイドルというのは『哀しいドル箱』と書いて『哀ドル』ではないだろうか」と書いた。歌の審査では『まんが日本昔ばなし』の「にんげんっていいな」をブルース調で歌った。

 結果、彼女は審査員の目に留まりアイドルとしてのデビューを勝ち取ることとなる。これらの作戦が「ほどよいアク」だったかどうかはともかくとして。

 そして2019年、オーディションに再び合格しバラエティ番組にデビューした彼女は、次々と他の番組にも呼ばれるようになる。主要なMCとはひと通り共演した。2019年のブレイクタレントにも名前が上がった。そして、鈴木紗理奈は「私、最近めっちゃテレビ出てるって言われるんですよ。おまえやんけ!」と叫んだ(『新春!爆笑ヒットパレード2020』2020年1月1日、フジテレビ系)。

 そんな勢いに乗る彼女だが、自分の現状を冷静に語ってもいる。

「短命ですからね、こんなポジションはホントに」(『ダウンタウンなう』2020年5月15日、フジテレビ系)

 芸能界はよく椅子取りゲームに例えられる。特定のポジションをキープできる人数は限られている。特に“若さ”や“新鮮さ”が評価されがちな若手の女性タレントが座る席は回転が早い。だから彼女はすでに次を見据えている。

「やらせていただけるのを感謝しながらも、ここでトップになるとかいうよりかは、自分にしか座れない椅子を作ることを考えるほうが、私は大事だと考えますね」

 ファーストサマーウイカは最初からファーストサマーウイカだった。だが、変わっていないのは容姿や立ち回りだけではないのだろう。彼女は同世代に類例がないキャラクターを武器にひな壇の席を勝ち取った。何よりも変わらないのは、そんな「自分にしか座れない席」を作ろうとする気構えなのかもしれない。

(文・飲用てれび)

テレビの中の女たち

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