だからだろうか。彼女はファンからの声や自分への反応を知るために、SNSのエゴサーチを欠かさないという。また、自分の言葉が手元から離れ、ネットニュースで嫌味ある角度で取り上げられることに対し、彼女はテレビなどで繰り返し批判的に言及している。今回も「何がそんなに不満か聞きたいです、直接。(ライターと)タイマンしたい。……なんてね」と笑った。

 仕事の入口から出口まで、あらゆる過程を知っておきたい。そうすることで仕事に責任をもちたい。そんな意志を一方で感じる。

 他方で、彼女は「なりきるのが苦手」だという。だから唯一のNGはお芝居の仕事。そんな演技への苦手意識とも関係しているのだろうか、自身がMCを務めるバラエティ番組に出演している時も、スタッフから事前に説明される番組進行の流れはあまり頭に入れない。

「ダメなんですよね、全部内容言われちゃうの。そのときの新鮮なリアクションがなくなっちゃうタイプなんで、私は。だから知っておかないくらいが、たぶんちょうどいい人なんだと思う」

 一方に、仕事のあらゆる過程を知っておきたい彼女がいる。自分のイメージを自分自身で管理しておきたい彼女がいる。他方に、仕事のすべてを知りたくない彼女がいる。手綱を離して自分を素の状態においておきたい彼女がいる。

 相反するように見えるベクトルが、彼女の中で同居する。そこで起こる乱反射。彼女のイメージの振り幅の大きさは、そんなところから来ているのかもしれない。

(文・飲用てれび)

テレビの中の女たち

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