前田は「秋元さんに言われたことをひたすら頑張ってきた」とインタビューで語っていた。対して、秋元康も前田について「言われたことを疑わずにすぐ実行する。その素直さが前田の最大の長所」と評している。(前田敦子AKB48卒業記念フォトブック『あっちゃん』より)

 自我が芽生え始める思春期を迎える彼女たちにとって、ともすれば言われたことをそのまま実行するというのは難しい。しかし、前田は秋元を信じて愚直に進んできた。

 これに関して前田が主演を務めた映画『苦役列車』の脚本家・向井康介も前田について非常に興味深い発言を残している。

「容れ物っぽい感じがするんですよ。そこに誰が何を入れるかによって、中身が変わるという」(『Quick Japan』 Vol.110より)

 秋元や向井の言葉からも、周囲の環境や周りを取り囲む人間関係によって、前田はその時々で変化をしていく存在であったことが浮き彫りになってくる。

 これは秋元が指摘するように素直さというパーソナリティからくるものだ。素直であるからこそ、何でもまずは受け入れて吸収してしまう。

 結果的にAKB48にとって前田のような変化を続ける柔軟な存在が必要だった。なぜならば、AKB48が求めたのはドキュメンタリー的な仕掛けであり、それらによって成長(変化)を見せることだったからだ。

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