■小学館のご近所・揚子江菜館

 18年3月号をもって同誌専属モデルも卒業するが、エライザが揚子江菜館をリコメンドしたのは、同年18年8月26日放送のTBS『メトログ』内でのことだった。『CanCam』の版元、小学館は神保町が最寄りの一ツ橋にある。撮影やミーティング、衣装合わせなどでちょくちょく来ては、揚子江菜館に寄って、夏場は冷やし中華を食べたのだろう。

 ところで、冷やし中華には元祖争いがある。この揚子江菜館と宮城・仙台の「龍亭」の2つの発祥説があるのだ。1933年、蕎麦好きの店主がご近所の名店、まつやでざる蕎麦を食べている時に閃いたのが揚子江菜館の「五色涼拌麺」(1510円)。ただし、実際に菜単(メニュー)に載るようになったのは戦後のことという。かなり値段は張るが、“富士山盛り”と呼ばれる具材の壮観さは圧巻。全般に昭和初期テイストが強く、甘めのつゆが独特だ。

 一方、毎年売り上げが落ちる夏場対策として、試行錯誤を重ねた末、1937年に完成したのが龍亭の「涼拌麺」(1250円)。「五色」に較べ、こちらはパーテーションされた長皿に具材がちょこちょこ盛られ、お上品な感じだ。タレは皆が普通想い浮かべる冷中の標準味。揚子江ほど甘さが立っておらず、食べやすくはある。

 同時代に別々の場所で似たものが生まれるのは決して珍しいことではないだろう。癖になる味や見た目、夏場の食欲減退期に喝を入れる、自分へのご褒美感からして、ぼく自身は涼拌麺より五色涼拌麺に軍配を上げたい。1食並盛りで満足できるボリュームもある。まだまだ暑い日が続く。冷やし中華もちょっと上質なものを食べ、なんとか残暑を乗り切りたいものだ。

(取材・文=鈴木隆祐)

アイドル食堂

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