アルピーの2人もわかっていない。おそらくきしころ(きし香露)を食べたことがないのだろう。夏場はきしころに限る。だって、讃岐うどんのぶっかけとも違い、温きしめんの汁がそのまま冷やして麺にかかっているのだ。汁もごくごく飲める。それに海老の天ぷらと生卵、薬味が載れば「天ころ」という立派な別の料理だ。むろんかき揚げを載せてもいい。

 ただ、平子も番組で言っていたが、「吉本芸人が東京から大阪に帰る時、わざわざ一回(名古屋駅に)降りて食べる」ほど、住よしのきしめんはおいしい。新幹線ホームに降り立てば、プーンと香る出汁の匂いにやられ、夜に会食予定があっても、つい啜りたくなる。

 ぼくはきしめんのあの平たいが、シコッとした食感が好きで、本場でもずいぶん食べてきた。プレーンな状態でも花鰹がたっぷり、油揚がちょこっと載るので、食べ進むうちに味がどんどん深くなる。汁の味は関東と関西の中間というべきか、見た目は濃いがともかく出汁感が半端ない。そして、冷凍麺ではあるが、住よしのつゆは専門店に負けていない。コスパを考えればやはりベストの選択だ。

 駅そばという点も奏功している。愛知県民にとっては、地元の主要駅に降り立つなり、あの香りが漂うのだ。パブロフの犬のごとく、刷り込まれても当然だ。

 名古屋駅構内の改札内外に計7店を数える住よし(唯一例外的に千種駅構内にもある)。マニアは「何番線ホームが旨い」などと囁き合っている。ただ、東海道線下り5・6番ホーム東京寄りの店舗を除けば、在来線ホーム店は天ぷらが揚げたてなのでお薦めだ。新幹線ホーム店で提供される天ぷら類も、実は在来線ホーム店で作られているのだ。

 そして何より、在来線には立ち飲み屋も兼ねる店があって、日本酒やつまみメニューも豊富。東京に夕食までに帰らねばならない時、ぐっと我慢の子できしめんを食べず、ビールと味噌カツだけ楽しんで帰京することもある。そんな時、あの出汁の香りもつまみになるのだ。

(取材・文=鈴木隆祐)

アイドル食堂

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