中澤裕子「モーニング娘。の多様性の象徴」だった異色のアイドルが現在も“終身名誉リーダー”【アイドルグループ「最年長メンバー」列伝vo.8】の画像
※画像は中澤ゆうこ『Legend』より

アイドルグループ「最年長メンバー」列伝

「長女タイプがたまらなく好き」「お姉さんキャラに何故かハマる」「推しはグループの年長者ばかり」……これは、そんな指向性をもつアイドルファンのための連載である。毎回1名ずつ、過去半世紀の女性アイドルグループごとに在籍した“最年長メンバー”たちの華麗なる軌跡を綴っていきたい。

第8回 モーニング娘。中澤裕子 Yuko Nakazawa

■ロックボーカリスト志望から国民的アイドルに

「負けませんよ。年は関係ないですよ」。初期モーニング娘。の最年長メンバーとなる中澤裕子が、オーディションの最終合宿審査に挑む前の言葉である。

 モーニング娘。はもともと、オーディション番組『ASAYAN』(テレビ東京系)の企画「シャ乱Q女性ロックボーカリストオーディション」の最終審査で落ちた5名のメンバーによって結成されたグループだ。このオーディションは、その名の通りアイドルのオーディションではない。

 そのため、最終審査に残ったメンバーには、それなりに人生経験を積んでいそうな、いさかかメイクが濃いめの女性も多く、1973年6月19日生まれ、当時24歳の中澤もその一人だった。

 現AKB48柏木由紀が29歳であることを考えると、24歳はまだまだ若い。だが、当時はかなりの異例であり、しかも、夜の酒場が似合う風情もある中澤は、それまでのアイドルに存在しないタイプだった。仮に24歳の中澤が時空を超えて、今のモーニング娘。の新メンバーオーディションを受けても合格しないだろう。

「シャ乱Q女性ロックボーカリストオーディション」がきっかけだったからこそ、そんな彼女が24歳にしてアイドルとしてデビューするという展開がありえたのだ。見方を変えれば、ある時期までのモーニング娘。は、メンバーの見た目、年齢、属性の不統一感や、中澤のような存在を許容する多様性こそが魅力だったともいえる。多様性の一例として、中澤が1998年8月に演歌歌手としてソロデビューする展開もあった。

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