■実力は折り紙つき?

 ところが、そんな活躍ぶりにネット上ではやむなしというか、こんな疑いの声も聞こえてくる。

「いわゆる“ゴリ押し”ではないか、と。しかし、森が所属する芸能プロダクションはメディアに顔が利きやすい大手事務所の系列でもなく、彼女を含めて所属タレントは3人しかいない事務所。それに以前とは違って、仮に特定の人物をあからさまに起用しようものなら、すぐに“ゴリ押しだ!”とネットの“エジキ”になってしまう時代です。今やリスキーでもあるのです」(ワイドショーディレクター)

 ではナゼ、彼女ばかりがことごとく起用され続けるのだろうか。日経BP総研上席研究員の品田英雄氏に聞くと、

「今、世の中は各分野で世代交代が進み若年化しつつあります。少し前までは“自立した強い女性”像が目立っていましたが、かわいらしくて小柄な女性が求められている時代に移り変わってきていると思います。その中でも『天気の子』から始まり、若くて透明感がある、そして演技ができて声もいい森さんは、クリエイターからは“おもしろい子”として映り、起用したくなるのではないでしょうか。

 それに田中みな実さんがウケているように、これまではネガティブとされてきた“したたかさ”“あざとさ”が女性の魅力の一つとして受け入れられる時代になりました。そのいい意味での“あざとさ”を、戦略なしに表現できる“素の凄さ”を持ち合わせています。それが時代にマッチしたことも合わせた森さんの強さだと思います」

『天気の子』では、2000人以上のオーディション参加者からヒロインの座を勝ち取った森。大ヒット映画『君の名は。』(2016年公開)のヒロインから大ブレイクした上白石萌音を倣(なら)うように、“あの新海誠監督が見出した才能”を業界全体が追って起用する流れもあるようだ。

 今年1月公開の映画『ラストレター』で、同じくオーディションによって彼女を選んだ岩井俊二監督も映画雑誌のインタビューで、

《参考資料となる映像を見た時点で決まりというか、即“この子がいい!”という感じでしたね。森七菜ちゃんはいろんなものを持たされているなというのが第一印象でした。歴代のいろんな女優さんの顔がオーバーラップしてくるような、そういう意味で恵まれている子だなと思います》

 “即決”だったことを明かしていた。やはりクリエイターを惹きつける魅力があるのだろう。

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