■炭治郎に匹敵する優しさと芯の強さ

 いまや大スターの佐藤も当時17歳で、“不幸体質の少年・野上良太郎”を演じていた。現在の佐藤のイメージと違い、ひ弱で、一見すると非常に頼りないキャラクター。当時は歴代最弱の主人公として話題になっていた。

「しかし、弱いのは肉体だけ。精神面は歴代でもずば抜けて高い。それこそ炭治郎に匹敵するレベルです。口調こそ穏やかですが、怒らせるとモモタロスさえ怯むスゴ味を見せる。第4話という初期の段階で“声も口調も穏やかなのにすごく怖い”という演技をしていて、後の演技派俳優の片りんを見せています」

 良太郎のモットーが「弱かったり、運が悪かったり、何も知らないとしても、それは何もやらない事の言い訳にならない」であることからも、彼の芯の強さが分かる。

 ちなみに、『鬼滅』の炭治郎は妹の禰豆子のために戦っているが、良太郎の場合は姉の愛理(松本若菜)を大切にしている。愛理は、序盤は戦いと無縁な人物として描かれていたが、年間通して意味深な描写が多々あり、終盤では物語のカギを握る超重要人物だ。

「婚約者が失踪して、あまりのショックから彼に関する記憶のみ喪失。良太郎も、姉を心配して高校を辞めているという、子ども向けとは思えない重い内容です。これに限らず、『電王』はギャグや個性的なキャラクターで楽しく見られますが、ストーリーが実にシリアス。この辺りも、『鬼滅』でさしはさまれるオーバーなギャグシーンに通じるものがありますね」

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