近くには歌舞伎座があり、アメリカンのサンドイッチは歌舞伎役者たちの御用達メニューでもある。現にぼくはついこの間、その後に控えた、歌舞伎役者への取材前、久々に立ち寄ってみた。彼も楽屋でよく食べると、番組の出演記録で確認したからだが、実は店内に入ったのは初めて。それまではテイクアウトを利用してきた。

 だから、店内に入ってびっくり。極彩色のまさにアメリカンな装飾を埋め尽くさんばかりに、芸能人の色紙が貼られている。昼時のテイクアウトは行列が絶えず、時間を外して行けば、だいぶディスカウントされているが、残るサンドは限られている。だが、ちょうど12時過ぎに入店しても、店の中はさほど混んでいなかった。

 店内では飲み物の注文が必須で、サンド類と同額で600円と高いが、冬場にテイクアウトしても、表で食べるには風も冷たい。それに卓上でないと、あの極厚サンドと格闘するには不利なのだ。具材がぼろぼろとこぼれ落ちてしまう。

 また店内オーダーだと、テイクアウトのように組み合わせ商品がない。あのタマゴは確かに美味だが、チキンならなんとか全量食べられるだろうとオーダー。ところが、噛みつこうとすれば、細かく割かれ、マヨネーズで和えられた鶏肉が、小馬鹿にするように雪崩を打つ。シャリシャリのカットりんごがパンから躍り出る。

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