おにやんまは2010年の創業。今では都内に7店舗ある。1号店が五反田にできた当初、ぼくもわざわざ途中下車か、回り道までしても食べたものだ。すっきりしたいりこ出汁は本場と遜色なく、ごん太の麺もしっかり噛み応えがある。麺は今ではちょっと柔くなった気がするが、それでも某丸亀製麺やはなまるうどんの比ではない。それが大体同じ価格帯で食べられるのだから、昼時の長蛇の列もやむを得まい。

 ぼくはつゆを啜りたい派なので、夏でもかけに鶏天か日替り天をもらう。天ぷらが必ず別皿で付くのが讃岐流。そこに備え付けのタレをかけ、半分ほど平らげては、純粋にうどんを楽しむ。天ぷらもかつては注文が入ってから揚げていたが、今は揚げ置きにさっと油を通している。それでも充分おいしい。神保町の丸香でのように、つい一杯やりたくなるが、ひっきりなしに押し寄せる客を見れば、そうもいかない。

 ところで、香川で育ち、製粉もされた小麦粉はじめ、香川産の素材を使いながら、おにやんまはあえて「讃岐うどん」を謳わない。「自分らがおいしいと思ううどんを出しているだけ」だからと、高松出身の同社社長は語っている。これは気張らずに様々な役に取り組む、女優・山口紗弥加の姿勢と共通している。

 彼女は料理も得意で、「家にいる時はほぼキッチンにいる」ほどだという。定番でよく作り置きしているのは粕汁だそう。

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