■「みんなと違う経験をして、さまざまなものを自分の中に詰め込んでいく」

 そんな状況で、背中を押してくれたのが、沖縄を代表するミュージシャンである喜納昌吉さんでした。昌吉さんは「あの曲は、沖縄をよく捉えている。魂までコピーしていたら、それは模倣ではない。だから、君ももっと沖縄に来て歌え。俺も壁を越えていくから」と言ってくれた。その言葉に後押しされ、『島唄』を全国発売することになったんです。その後、沖縄と本土の間にあった扉は開かれ、音楽的な交流が活発になっていきました。

 その後、僕は沖縄以外にも、アジアをまわり、キューバ、ブラジル、アルゼンチンといった国々に行き、現地のミュージシャンと交流してきました。デビューしてからの30年間は、旅をしながら多くの経験をし、新しい音楽を生み出す探求の時間でしたね。僕は才能を持って生まれたタイプではないので、みんなと違う経験をして、さまざまなものを自分の中に詰め込んでいくしかなかったんです。

 でも、今はコロナ禍で、人に会えないし、旅もできない。僕ら音楽家はライブで歌うこともままならない、いわば失業状態です。だから、この空白期間に曲を作りました。今度のアルバム『次世界』は、今の特殊な状況下でなければ生まれなかった曲が詰まった一枚になっています。

「元の世界に戻りたい」というのが、みんなの共通の思いでしょう。でも、もしかするとコロナ禍というのは、人間がいい形で変われる機会なのかもしれない。元の世界に戻るのでなく、「次の世界」に踏み出すべきなんじゃないか――アルバムのタイトルにはそんなメッセージを込めました。

 このアルバムの曲が、これまで以上に、いろいろな世代の方々に届いたらいいなと思っています。

宮沢和史(みやざわ・かずふみ)
1966年1月18日生まれ。山梨県出身。1989年、バンド『THE BOOM』でデビュー。1993年、沖縄の文化や歴史を取り入れた曲『島唄』が大ヒット。その後、南米の音楽に傾倒し、サンバのテイストを取り入れた『風になりたい』は代表曲となる。2014年に『THE BOOM』解散。現在はソロアーティストとして活動中。幅広い表現活動を行い、俳優としても、映画『るろうに剣心 京都大火編』やドラマ『南極大陸』(TBS系)などに出演。著書も多数。

あわせて読む:
・宮沢氷魚、寝起きの“三線動画”に「永久保存」「お父さんそっくり」の声
・銀杏BOYZ・峯田和伸、故郷への愛を語る「山形弁をそのまま出す。それがかっこいいし、面白い」
・田原俊彦、歌って踊り続ける人間力「一番好きなことだから、40年も続けている」
・『濱マイク』映画監督・林海象インタビュー「モットーはいつでも撮る、どこでも撮る、どんな条件でも撮る」
・ミスチル桜井の息子・Kaitoは3位!女子が注目の「新世代二世タレント」は?

  1. 1
  2. 2