雨の中、一風変わった理屈をつぶやきながら、落ち葉に苛立ちをぶつけるイサキ(伊藤)。そこに通りがかり、イサキの不条理な言い分に付き合いながら、少しずつ打ち解けてゆく人物を加藤は演じる。
ためらいがちにイサキとコミュニケーションをとろうとする加藤は、イサキに比べればごく常識的なロジックを持つ人物である。しかしまた、ある種の寓話性すら覚えるようなキャラクターをまとう加藤の存在感は、伊藤演じるイサキの、いささかエキセントリックでピュアな人物像と不思議なマッチングを見せる。
独特のリアリティの水準をもったこのショートドラマにおいて、加藤諒という俳優の有する個性はきわめて重要な役割を果たしている。
一方、この風変わりなドラマを監督する熊坂出は、乃木坂46のフィルモグラフィーの中では普段、どちらかといえばドキュメンタリー作家としてのイメージが強い。彼が担当してきた岩瀬佑美子、星野みなみ、橋本奈々未、生駒里奈らの個人PVは、いずれもドキュメンタリーの体裁をとる。そして、これらの作品は当該メンバーになにがしかの課題を設定し、それを乗り越えるストーリーを志向することが多い。いわば、メンバーに負荷がかかるさまが見えやすい作風でもある。