元『週刊文春』編集長・花田紀凱「タイトルの天才」の部下をグッとさせる言葉の画像
柳澤健著作の『2016年の週刊文春』(文藝春秋)

柳澤健『2016年の週刊文春』著者インタビュー 2/7

 『2016年の週刊文春』は文藝春秋という会社と『週刊文春』という雑誌を軸に、日本の出版ジャーナリズムを描き切った大作だ。主人公は花田紀凱と新谷学、2人の『週刊文春』編集長。著者の柳澤健は、2人の間の世代の文藝春秋社員で、彼らとともに仕事をしてきた編集者だった。彼が見た2人の天才編集者の実像とは――。7回にわたって語ってもらった。

――本書では、80年代末から90年代初頭にかけて、『週刊文春』の黄金時代を築いた名編集長・花田紀凱さんの活躍が描かれています。

柳澤:花田さんは週刊誌の編集長の目指すべき姿、編集長はどうあるべきかを明確に示した。その典型例が、女子高生コンクリート詰め殺人事件。未成年ゆえに少年法に守られていた犯人たちの名前を実名で報道したことは、大きな論議を巻き起こしたけど、花田さんは最後まで誰にも相談せずに、自分ひとりの責任で決めた。これが編集長なんだということを、身をもって示した。花田さんの編集長としてのあり方は、その後の『週刊文春』の編集長たちに大きな影響を与えたと思う。

 花田さんは言葉を持っている編集者で、タイトルの天才。コピーライティングの力が本当に凄い。『週刊文春』に統一教会を脱会した山崎浩子の手記を載せたときに「これは平成三大手記のひとつだよ」と言うから、デスクが「残りのふたつはなんですか?」と聞いたら、花田さんはニヤリと笑って「これから『週刊文春』が取るんだよ」と言ったというエピソードが残っている。カッコいいよね。

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