■「人を励ましてやる気を出させる能力が傑出していた」
そういう言葉のセンスが、部下を褒めたり励ますときにも出てくるし、花田さんは思ったことしか言わないから、言われた方もグッとくるわけ。私は花田さんから「柳澤は天才だよ」とさんざん言われたんだけど、どう考えてもそうじゃないわけ。周りには凄い人たちがたくさんいたから。「花田さん何を言ってんだかな」と最初のうちは信じなかったけど、でも、あまりに何度も言うもんだから、そのうちに「この人、俺の文章が好きなんだな」「じゃあ花田さんが喜ぶような原稿を書かなきゃな」と思うようになった。そんな、ちょっとした努力をさせてしまうのが他の編集長と違うところ。「この人を喜ばせたいと思わせるのがリーダーの資質」と新谷学は言っていたけど、花田さんの人を励ましてやる気を出させる能力は傑出していたと思う。
(取材・文 菊池俊輔)
PROFILE
やなぎさわ たけし
1960年東京都生まれ。ノンフィクションライター。慶應義塾大学法学部卒業後、空調機メーカーを経て文藝春秋に入社。花田紀凱編集長の『週刊文春』に在籍。新谷学とは同時期に『Number』で働いたことも。2003年に独立、2007年に『1976年のアントニオ猪木』で単行本デビュー。
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