浜野謙太(撮影・弦巻勝)
浜野謙太(撮影・弦巻勝)

 俳優って「虚構を作る」仕事ですが、僕はなるべく「ホンモノ」をやりたいって思ってます。

 僕は俳優業の一方、ミュージシャンとして活動しています。そこでは同じ曲を楽譜の通り、何度も演奏したりするわけですが、いざ音符を出すときに、どこか“しらじらしさ”みたいなものを感じてしまうことがある。俳優のセリフもそれと同じで、台本に書かれた言葉を言わなきゃいけないんだけど、それがしらじらしくなればなるほど、熱がなくなってしまう。

 でも実際は、その場その場での状態次第で、セリフの表現は変わってきます。書いてあるから言うだけじゃなく、その心情へのその時々の必然的なアプローチがあって、俳優はそれをぶつけ合って演技をする。

 そこで、もともとミュージシャンの僕が、ずっと俳優をやってきた方々とまったく同じアプローチをするのなら、僕がドラマや映画に参加する意味はありません。僕には他とは違った視点、違ったアプローチが必要で、そういう意味で、脚本から逸脱するような自分勝手な役作りも多少はいいのかなと思っています。

 今回出演した『くれなずめ』は、高校の同級生6人の過去と現在が交錯する物語なんですが、最初に脚本を読んだとき、“現場の役者の力でだいぶ変わるんだろうな”という印象でした。特に、松居大悟監督はワンシーン、ワンカットの長回し撮影が多いので、お互いの細かい空気感だったり、セッションするような感覚が重要になってくる。音楽でアドリブしたりする感じでしょうか。まさに、虚構の中でいかにホンモノが描けるか、です。

 共演者は成田凌くん、高良健吾くんをはじめ、みんな若くて、僕だけがおっさん(笑)。しかも、作品的には僕が最年少の役柄でした。俳優の世界は年功序列を大事にしますから、上下関係で堅苦しくなって、それが作品に出るのはイヤだった。カットがかかった後で、突然敬語を使われるのもなんか違うじゃないですか。だから、自分から率先してなめられるように努めました(笑)。

 結果的に、6人の同級生の楽しそうな感じとか、部活の部室内のような変なノリが作品にうまくにじみ出ていたので、そこは良かったなと思います。

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