■俳優をやったからこそ、気づけたこと
以前、唐沢寿明さん、麻生久美子さん、ムロツヨシさんと共演する機会があったんですが、皆さん、緊張する現場なのに、ちょっとでもNGが出ると、一瞬で素の自分に戻って、笑って話したりできるんですよ。
自然体というか、現実と虚構の際どいところを行き来しているというか……これは本当にスゴイと思いました。だからこそ、演技中に何が起こっても対応できるし、誰もが納得できる“しらじらしくない”演技ができるんだなと。
これは、演技面はもちろん、音楽面でも影響を受けましたね。自分たちのライブも、もう少し、しらじらしくなくできるのかなって。それまでは“こんなバンドだから、こうやらなきゃいけない”って、どこか型にハマって考えていたんです。でも、もっとメンバーの調子やお客さんの様子次第で変えてもいい。俳優をやったからこそ、気づけたことです。
だからといって、じゃあリアルだったら良いのかというと、実はそういう問題でもない。「このテイクにはパッションがあるね」ということもあれば、「この場面にこの熱量はいらなくない?」ということもあります。そのリアルさが必要なのか必要じゃないのか、全体として見たときに判断されるのは、演技も音楽も同じですね。
虚構と現実には、ちょっとずつズレがあって、それをそのつどそのつどちゃんと受け取って、瞬発力でカタチにしていく。これが僕の中で共通してる仕事のやり方です。
浜野謙太(はまの・けんた)
1981年生まれ。神奈川県出身。バンド『在日ファンク』のボーカル兼リーダーとして活動中。俳優としても活躍し、映画、ドラマ、CMなどに多数出演。主な出演作として映画『婚前特急』『ディアスポリス-DIRTY YELLOW BOYS-』『おいしい家族』、NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』『まんぷく』、NHK大河ドラマ『西郷どん』『いだてん~東京オリムピック噺~』などがある。5月からは、NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』にも出演。
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