■「暗い時代だからこそ“ポジティブ”に」
5月からは新曲の『ふたり物語』を使ったCMが流れていますが、動画配信で僕を知ってくれた若い人が、この曲を聴いてくれたりする。さらには、『ビリーバンバン』の古い楽曲を探してくれたりもする。面白い時代になったと思いますよ。
3年前、僕らは50周年記念コンサートをやりました。2014年に脳出血で倒れた兄(菅原孝)は車椅子での参加となりましたが、同じ年、僕は大腸がんを患っています。だから、2人そろってステージに立てたことは、本当にうれしかったですね。
兄弟で歌ってきて良かったことは、声質が似ているから、きれいなハーモニーを奏でられること。逆に悪かったことは……基本的に仲が良くないことでしょうか(笑)。
でも、今ではそれぞれ病を経て、お互いを思いやる心が生まれたように思いますね。ましてや、現在はコロナ禍であまり会えませんから、ときどき「お兄さん、大丈夫かな」と心配するようにもなった。良い関係になれたかなと思います。
僕は常に「ポジティブシンキング」です。たとえば、今はコロナ禍で、できることが少ないけれど、だからこそ自分を見つめる時間がたっぷりある。僕は歌う機会が減った分、ユーチューブで海外のボイストレーニング動画を見て、発声練習をしたりしています。今は、自分の内面をじっくり見つめるチャンス。そして何かに気づいて行動を起こせる人が、これから前に進めるんだと思います。
“ネガティブさ”って、誰かに与えられるものではなく、自らが作ってしまうもの。煩わしく思える雨だって、ホコリやチリを洗い流して、すべてをキラキラと輝かせ、土のかぐわしい匂いを立ちのぼらせてくれますよね。暗い時代だからこそ“ポジティブ”に生きたいんです。
菅原進(すがわら・すすむ)
1947年生まれ。東京都出身。1969年、兄・菅原孝とのデュオ『ビリーバンバン』として『白いブランコ』でデビュー。以降、『さよならをするために』や『また君に恋してる』など数多くのヒット曲を世に送り出す。また、ソロアーティストとしても活躍し、最近では動画配信サイトで発表したカバー曲が、若い世代に絶大な人気となっている。
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