ここで注意しておきたいのは「アイドルに向いていない」という発言自体は、他のアイドルからも出てくるが、彼女の発言が決定的に異なっているのはそれを自分のなかで理解しながらも、自分とアイドルの間にあるギャップを埋めようとはせず、「自分らしさ」としてある意味達観した視点を備えているという点だ。

 大園の何か惹かれる魅力というのは、優しく透明感のある歌声や笑顔溢れるパフォーマンスという表面的なものに加えて、こうした彼女のスタンスにもあるのだろうと思う。

『第60回 輝く!日本レコード大賞』(TBS系)のステージ裏で大園が発した「なんか、乃木坂も悪くないなって思った」という発言は後に名言として語り継がれているが、ここには大園が「アイドル」へと少し歩み寄った貴重な瞬間だったように思う。

 周りが規定するアイドル像になる必要はない。素の自分が受け入れられる場所がここにある。これも乃木坂46という温かくて柔和なグループ性の賜物だろうし、そんなグループでセンターに抜擢された大園はそれこそ運命だったのではないかと感じてしまう。

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