伊藤万理華
伊藤万理華

テレビの中の女たちvol.59伊藤万理華

 私は彼女のことをよく知らなかった。伊藤万理華。元乃木坂46の1期生。いまでも彼女についてそんなに知っているわけではない。が、現在放送中の『お耳に合いましたら。』(テレビ東京系)で地上波ドラマの初主演を務める彼女に、なんだかとても惹かれている。

 ドラマは、漬物会社に勤める会社員の日常を描く。伊藤が演じる主人公は、仕事ではあまり前に出られない引っ込み思案な性格。しかし、私生活はラジオ、氷川きよし、チェーン飲食店のグルメ(通称「チェンメシ」)など好きなものに溢れている。そんな彼女が友人のアドバイスなどを受け、ポッドキャスト番組を始める。語るのは「チェンメシ」への愛。すると、次第に周囲との関係に変化が――というような物語。

 個人的な趣味を中心に物語が回っていく展開は、近年の深夜のテレ東ドラマの“王道”だ。また、人間関係の引っかかりがあまりなく(あってもすぐ解消されて)進む感じも、いまっぽいかもしれない。同僚や後輩との関係は、性別や性格、趣味嗜好が違っていても良好。あからさまな嫌がらせをする上司もいない(いまのところ)。彼氏も優しい(いまのところ)。アパートの隣人とも意気投合。ドラマっぽい対立関係があまりなく平熱プラスマイナス0.5度ぐらいで進む感じ、だけれど主人公が自己表現を通じて確実に一歩ずつ前に進んでいく感じがなんだか心地よい。

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