■「世界に出ろよ、日本人よ」と思います。力貸してくれよ、と。俺一人じゃ無理なんですよ

 京都の家を売って、20億ぐらい持ってアメリカ行ったわけだけど、そんなもんもう、すっからかんですよ。

 それで、アメリカで俺と一緒に闘ってる人、誰がいます? 「世界に出ろよ、日本人よ」と思います。力貸してくれよ、と。俺一人じゃ無理なんですよ。

 死ぬまで、映画と闘ってますよ。オレも深作さんと一緒だと思います。ケガして死のうがなにしようが、現場で死にたいですね。盆栽で死にたかない(笑)。

 僕は、文化と経済は比例すると思ってるんです。現状は、文化をおろそかにしてる、と思えてならない。国も、われわれに協力してほしい。

 この素晴らしい日本文化を、世界に伝えたいんです。(インタビュー終わり)

 

 あらためて、不世出の役者、そして侍だった千葉さんを悼みます。

 

注1=1900年に新渡戸が英語で書きあげ、全世界でベストセラーになった著作。映画では、同書の思想をもとに、アメリカに渡った武士たちの数奇な運命を描いている。

注2=深作欣二。1930年生。監督作『仁義なき戦い』シリーズ『蒲田行進曲』『バトルロワイアル』など多数。スピード感とリズムに溢れるカメラワークは世界中の映画人に影響を与えた。『ドーベルマン刑事』『柳生一族の陰謀』『魔界転生』など、千葉とのコンビも数多い。2003年、『バトルロワイアルⅡ 鎮魂歌』の撮影中に前立腺がんの転移のため逝去。「深作監督の監督デビュー作が、俺の初主演作でした。あれほどの映画監督はいない。俺の人生に欠かせない人です」(千葉談)

ちば・しんいち 1939年1月22日生まれ。体操競技で五輪を目指し、日本体育大学に進学するが、腰のケガで断念。東映ニューフェイスに応募してトップで合格する。以降、本物のアクションができる俳優として活躍し、深作欣二がシリーズ構成を務めた68年のテレビドラマ『キイハンター』でのアクションは、世界中でファンを獲得した。70年にJACを設立。のちに真田広之志穂美悦子、伊原剛志、堤真一らを輩出する。73年の『仁義なき戦い 広島死闘篇』では、強烈なアクを持つヤクザ・大友勝利を演じ絶賛される。78年の『柳生一族の陰謀』以来の柳生十兵衛、80年の『影の軍団』以来の服部半蔵は代名詞というべき役で、その殺陣は当代一と評される。92年からロサンゼルスに移住。活躍を続けている。クエンティン・タランティーノ、ジャッキー・チェンも千葉の熱狂的なファンとして知られる。2021年8月19日永眠。

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