■張りつめた空気が満ちている客席は、今思いだしても泣きそうになる

 そして“何か自分で考えなくちゃ”と思っていたとき呼んでいただいたのが外部の舞台でした。吉本新喜劇の作り方とは違って、だいたい1か月稽古をして、1か月本番があって、その間、セリフで別人になりきれる。芸人としての“ネタ”がない僕にとって、物語の中の一人になれるというのはすごくうれしかった。10年間、舞台を中心に活動して気づいたことも多かったですし、僕自身、ものすごくお芝居が好きだなって知ることができたんです。

 今、これから始まる新しい舞台の稽古の真っ最中です。宮藤官九郎さんの作・演出で、自宅で台本を読んでいるだけでも笑っちゃう。稽古場で役者さんが実際に演じるのを見ると、もうゲラゲラ笑っちゃう。本当に笑ってもらいたいのはお客様なんだから、自分が笑ってちゃダメなのは重々分かっているんですけど、とにかく稽古場が楽しいんですね。

 昨年はたくさんの舞台が中止になりましたし、やっとできた公演も、お客様はソーシャルディスタンスを取った席に座って、終演後にも感想を口にすることなく、静まり返って退出する。劇場という、楽しむための場所に来ているのに、張りつめた空気が満ちている客席は、今思いだしても泣きそうになるくらい、悲しかったですね。

 もちろん、今も安心して大声で笑える状況ではありません。でも公演ができること自体ありがたいし、マスクの下で、存分に笑っていただける舞台になると確信しています。宮藤官九郎さんのお芝居に出ると決まったとき、僕をずっと応援して、支えてくださっている方々がとても喜んでくれました。自分が大切に思っている人たちが「いいね!」と言ってくれるお仕事ができる。僕という人間は、本当に恵まれているんだなとすごく思います。

藤井隆(ふじい・たかし)
1972年生まれ。大阪府出身。1992年に吉本新喜劇入団。以降、お笑い芸人、タレントとしてマルチな才能を発揮。2000年には、歌手としてリリースした『ナンダカンダ』が大ヒット。同年の『NHK紅白歌合戦』にも出場した。俳優としても精力的に活動し、NHK大河ドラマ真田丸』、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)、映画『みをつくし料理帖』、舞台『大地』など数多くの作品に出演。また、2014年には音楽プロデューサーとして、自身のレーベル「SLENDERIE RECORD」を立ち上げている。

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