■深みのある作品だからこそ苦戦

 これまでの朝ドラの恋愛模様は、朝の支度をしながら見る時間帯ということもあり、複雑な恋愛感情が描かれることは少なく、あっても三角関係がほとんど。今作のような、若者たちの苦悩と嫉妬が入り交じる四角関係は画期的で、今回は朝ドラの歴史に残る告白シーンになりそうだ。

 しかし、これは諸刃の剣でもあり、複雑である以上、朝ドラらしい“分かりやすさ”は薄れてしまう。それは視聴率にもあらわれていて、初回は19.2%を記録し、前作『おちょやん』の初回18.8%を上回るも、その後は18%~15%台を推移していて、今週は16.5%から横ばい状況(ビデオリサーチ調べ/関東地区/平均)。

 今のままでは、『おちょやん』の期間平均17.4%を下回ってしまうどころか、朝ドラの期間平均ワーストを記録した、09年度後期の『ウェルかめ』の13.5%ほどではないが、トンデモ展開で物議を醸した、12年度後期の『純と愛』の17.1%にも及ばない危険水域が見えてきている。

 ただ、脚本が清原の初主演作でギャラクシー賞の18年9月度月間賞など、各賞を受賞したドラマ『透明なゆりかご』(同局)や、今作にも出演する西島秀俊(50)と内野聖陽(52)がダブル主演した人気ドラマ『きのう何食べた?』(テレビ東京系)を手掛けた安達奈緒子氏なので、今後も神回が見られる可能性は高いと思いたい。

 今作の制作統括を務める吉永証氏はインタビューで、安達脚本について「描かれる人物像が非常に奥深い。セリフが考え抜かれていて、単純な一言のように聞こえても、丁寧に読むと、実はその人物が抱えている背景や考え方がしっかりと書かれている」と評価しており、これまでの朝ドラとは違った、深みのある作品を目指しているようだ。

 脚本だけでなく、俳優陣も若手からベテランまで芸達者をたっぷり揃えている。数字にとらわれない、伝説の名ドラマになるなることを期待しながら、最終回まで見届けることにしよう。(ドラマライター/ヤマカワ)

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4