■『いだてん』を彷彿とさせるスピード感
同ドラマの特徴は、朝ドラ史上類を見ない展開の早さ。ヒロイン役の子役時代、夫との出会いから結婚、義実家での慣れない生活、戦争による身内の死。ここまで、通常なら3か月ほどかけて描かれる朝ドラの定番エピソードが、今回は3人のヒロインが登場するためか、1か月たらずで描かれた。
かといって、一足飛びの進行で話が薄くなったわけではなく、見ていて物足りなさは感じなかった。特に今週は胸に迫る展開の連続で、上白石とその脇を固める俳優陣の好演と、細かい伏線の巧妙な張り方もあり、視聴者の反応も好評。平均世帯視聴率も最高記録を更新した。
異例の朝ドラになりつつある同ドラマだが、このスピード感と情報量は、金栗四三(中村勘九郎/40)と田畑政治(阿部サダヲ/51)という2人の主人公によって、日本人初のオリンピック出場と、日本初のオリンピック開催までの奮闘を描いた、19年放送のNHK大河ドラマ『いだてん』を彷彿させる。
残念ながら『いだてん』は、ドラマファンから高評価を得たものの、大河ドラマの常連ファンに受け入れられずに惨敗した。今回は朝ドラで似た手法が取られたわけだが、大河よりは柔軟なファンが多いためか、それほど嫌われてはいない。NHKは『いだてん』の仇を、『カムカム』でとった形だ。
次週の予告によると、安子は再婚を勧められ、娘・るいと引き離されそうになり、岡山を飛び出して大阪でるいと二人暮らしを始める。しかし、菓子を売り歩いている安子が、地元ヤクザらしき男たちに妨害を受けているような姿も。大阪でも苦難の生活が待っているようで、しばらくは涙を誘う展開が続きそうだ。(ドラマライター/ヤマカワ)