■大阪は、マレーシアの空気にすごく似ている

 大阪は、僕の故郷のマレーシアの空気にすごく似ている。だから、大阪に対して、懐かしさや愛着を持ったのかもしれません。そんな大阪という街に集うアジア系の人々を通して、大阪の今を伝えたいと思い、この映画を撮りました。大阪は東京と比べると、やっぱり“二番感”がありますよね。文化も経済も東京を中心に動いているから、いくら頑張っても大阪はかなわない。でも僕は、大阪が二番だとは全然思いません。現実的に、東京じゃなきゃ映画を作れないわけでもないですし、大阪からもっと経済や文化が発信できるようになればいいなと思う。劇中に「大阪ドリーム」というセリフが出てくるんですが、それにはこんな期待を込めています。

 これまで、僕は『新世界の夜明け』『恋するミナミ』、そして今回の『カム・アンド・ゴー』と、大阪を舞台にした作品を撮り続けてきました。この大阪三部作で、もう大阪で撮るものはないと思っていたんですね。ところが、このコロナ禍で人々の生活や経済が大きく変わってしまった。それによって、新しい、違った大阪が生まれている気がするんです。2025年には大阪万博が予定されていますし、また大阪を舞台に、大阪の“新しいリアル”を切り取ってみたいなと思っています。

 実は僕は、住む家を持っていません。梅田のゲストハウスで生活を送っているんですが、不便は全然感じませんね。家を持たないことでかえって自由になれるし、行動のかせもなくなる。そういう意味では、梅田周辺全部が僕の家みたいなもの(笑)。もっと言えばちょっと大げさだけど、世界中のどこでも“我が家”って感覚なんです。

リム・カーワイ(りむ・かーわい)
1973年、マレーシア生まれ。1993年に来日。1998年に大阪大学基礎工学部電気工学科を卒業後、2004年に北京電影学院の監督コースに入学。卒業後、北京にて『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』(2010年)を自主制作し、長編監督デビュー。これまで国境にとらわれない作品を撮り続けている。監督作品として『マジック&ロス』『新世界の夜明け』『恋するミナミ』『いつか、どこかで』『どこでもない、ここしかない』などがある。

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