■菅義偉元首相とNHKの不健全関係がドラマ制作に影響か

 有馬キャスターの降板があったように、NHKと菅前首相の不健全な関係がドラマ制作部門にも大きな影響を与え、それが『ちむどんどん』の不自然さにつながっていたということだろうか。仮にそうだとすれば、NHKの番組制作現場では、かなり神経をとがらせて政治批判を消去しようとしているのだろうか。

「NHKすべてがそういうわけではなく、社会問題に切り込む意欲作や、新しい挑戦しているドラマはほとんどがNHKの作品と言っていいほどです。たとえば、神尾楓珠さん(23)と星野源さん(41)が出演したドラマ『17歳の帝国』はアニメと実写の中間ぐらいの質感で、政治をテーマにしながらも、軽やかかつポップな映像と音楽にのせて、さりげないメッセージ性を忍ばせていたドラマでした。

 ただ、菅前首相によって有馬キャスターが降板させられたと言われていることなどを考えると、『ちむどんどん』は沖縄返還50周年というところで、最初から上層部に“政治批判が含まれてはいないか”とロックオンされていたのではないかと。そうした状況下で、沖縄問題もメッセージをごくわずかに含ませる形で、上層部に伝わらないように作ったのでは……と感じました。

『ちむどんどん』を作っているスタッフの中には、沖縄が背負わされている問題を描こうという意識はあったはずです。いろんな意味で、それを描こうと挑戦したことには意義があったと思いますが……」

 国境なき記者団によって毎年発表されている世界の報道の自由度ランキングで、2022年の日本は第71位だった。これはG7の加盟国中最下位の結果だった。

「まさに、日本の報道の自由度が低いという問題が『ちむどんどん』に表れているように感じました。

 1、2週目とお盆を描いた15週目、最終週を見る限りは、『ちむどんどん』の制作サイドにはやりたいことがきちんとあったのだと思います。ただ、あのぐらい入れるのがギリギリだったのではという印象でした。部分的に、“制作陣が絶対伝えたいのはここ”という良いシーンがあったので、そのあたりだけまとめて、全2回の前後編にすると名作になりそうな気がします。

 今回、沖縄返還50周年記念作品で、NHK上層部と視聴者の期待の板挟みになる仕事を引き受けた小林制作統括も、ある意味被害者の一人だと言えるのではないでしょうか……」

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