■そもそも「沖縄の歴史を描かない」ことが不自然

 4月30日、『沖縄タイムズ』に掲載された羽原氏のインタビューでは「沖縄という土地が、他の地域に比べて歴史を扱う上でデリケートな部分を多く抱えていることは分かっている。それでも平日の朝8時から見てもらう番組は負の歴史ではなく、その時代をたくましく生きた家族を通して、今のお茶の間が元気になってくれる話を作ろうとテーマを決めた」と語っていた。

「そもそも、沖縄50周年記念作品だと謳っているのに“デリケートな部分や負の歴史を描くつもりはない”と言っているのも不自然なこと。“何も描かない”ということは、“何か描かない理由があるのか”と思われても不思議ではない。NHK局内では、“そんなに深いところまで突っ込まないよね”という暗黙の了解、忖度などがあったのではないかと勘繰ってしまいました。

 NHK上層部はSNSなどの声にもう少し真摯に耳を傾けても良いのではないかと思います。ドラマ制作の人たちは問題意識を持っている印象があるのですが、『ちむどんどん』には上層部が目を光らせて検閲があったのか、制作陣が本当に描きたいものを出し切れたのでしょうか。役者さんにしろ美術さんにしろ、いろんな方が一生懸命に向き合っているのに、仕上がりがあまりに不自然だったように思います。

 NHKの上層部は、良い作品だったと自画自賛するのではなく、もう少し客観視して、視聴者含めてみんなの声を真摯に受け止めるコメントを、少なくともトップの前田会長は出したほうが『ちむどんどん』への風当たりの強さを和らげることができたのではないかと思います。

 それに加えて、批判されてきた脚本家、役者さんたち含めて関わった人を労う言葉も必要です。批判の矢面に立ってきた方々を守るコメントを出したほうが、結果としてNHKの好感度は上がったと思うのですが……」

『ちむどんどん』は朝ドラ歴代ワースト4位の平均視聴率15.8%(関東地区/ビデオリサーチ調べ)を記録してしまった。今後、同作はどのように評価されてゆくのだろうか――。

田幸和歌子(たこう・わかこ)
ドラマライター。様々な媒体でドラマに関するコラムを連載しており、俳優や脚本家、ドラマ制作現場の取材なども行っている。現在は朝ドラ『舞いあがれ!』の毎週レビューを『毎日が発見ネット』で連載中。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinkiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)がある。

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