コンシェルジュのような存在

前立腺がんを早期発見するために有効なPSA検査という方法がある。米国ではPSA検査を毎年受けている者、受けていない者、各3万8000人を13年間追跡した大規模調査によれば、死亡に至ったのは検査を受けたほうが1万人当たりで3・7人と、逆に受けないほうの3・4人を上回った。

ただ、がんの中でも前立腺がんほど進行が遅いがんは珍しいという。もっとも、室井氏は他のがんでも、すぐに手術することには懐疑的だ。

「がんの種類や進行具合によりますが、米国のがん委員会は、いきなりの手術はご法度と考えています。手術の効果を高めるためには抗がん剤を投与したほうがいいケースもあれば、放射線治療がいいケースもあります」

さらに、室井氏は"医療ソーシャルワーカー"の活用を勧める。

「患者の医療費や生活費など経済的問題から、在宅ケアへ向けての援助、転院などの相談にも乗ってくれる病院内のコンシェルジュのような存在です。あまり知られていませんが、患者の目線に立って相談に乗ってくれるのが大きいですね」

そして、室井氏は何よりも頼りになる存在が、すぐ近くにいることが重要だと強調する。

「がん治療を果たした患者さんが、治療中に一番頼りになったのは医者や専門家でもなく、家族や友人だという人が一番多いんです」

常日頃から身の回りの人々に感謝の気持ちを忘れずに接する―これが一番の"がん対策"かもしれない。

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