1人では来られない不気味度満点の廃屋
今から2年前、ぼくが21歳になった夏のことです。
夕食を食べ終わり自室で寛いでいると、普段からつるんでいるカズキとトモヤがやって来ました。こいつらとは10年以上の仲なので、うちの親とも打ち解けちゃっていて、
「こんばんは~、あがります」
と玄関でひと声かけて、僕の部屋まで勝手にやって来るのです。まあ、いいですけど。
ベッドで横になっていると、カズキが言いました。
「肝試しに行くぞ! ほらほら、早く支度しろよ」
「そうそう、行くよ!!」
トモヤが続けます。
肝試し!? どうやらカズキが会社の同僚から、心霊スポットを聞かされて、その気になってしまったらしいのです。
僕らが住む町は県境にあります。その心霊スポットは、川を渡った隣県にあるとのことで、さっそくトモヤの運転する車でそこに向かいました。
車中でカズキがその心霊スポットについて話します。
「なんでも一家惨殺事件が起こった建物だそうだ」
心霊スポットにありがちなパターンです。
そうこうして30分ほどで着いたのは1軒の空き家。まわりに住宅がまったくなく、この1軒だけがぽつんと建っています。
ひと目見ただけで長いこと人が住んでいないことがわかりました。懐中電灯で照らした木造平屋建ての外壁は、塗装ばかりか壁自体が剥がれかかっています。ところどころに張られたトタンも、すっかり錆びて赤茶色に変色していました。
とても1人では来られない不気味度満点の廃屋です。