成仏できない老人が住人を不幸にする!
思い余ったカズヤの母親がぼくに電話をかけてきました。
「カズヤがおかしくなったのは知ってるわよね。なにか理由があると思うの。なんでもいいから知ってることを教えてほしいの……お願い」
受話器の向こうから鼻をすする音が聞こえます。泣いているのでしょう。
ぼくが思い当たるのは廃屋での1件だけ……というか、それ以外に考えられることはありません。
「実は、川向こうの廃屋に肝試しに行って……」
廃屋で起こったことについてぼくが知るすべてをカズヤの母親に伝えました。すると、
「そうだったの……もしかすると、それが原因かもしれないわね。あなたたち2人は大丈夫なの?」
「はい、大丈夫です」
「じゃあ、カズヤを然るべき人のところへ連れて行くわ。私の友人に霊媒師がいるから」
そう言って、カズヤの母親は電話を切りました。
その後、正気を取り戻したカズヤを訪ね、当時の話を聞いてみました。
カズヤいわく、母親に連れられて行ったのは、祖母……母親の実家だったそうです。そこに母親の友人でもある地元で有名な霊媒師を呼びました。
カズヤの前に現れた霊媒師は50歳くらいの女性で、凛とした雰囲気を漂わせています。そして、しばらくカズヤを見つめていた彼女は、廃屋のことや老人のことをピタリと言い当てました。
なんでも押し入れにいた老人は、あの家の元々の主で病に伏せてしまったそうです。
子供がいたのですが、折り合いが悪く家に寄り付かず、もちろん面倒もみてもらえませんでした。
そして、誰にも看取られることなく、ボロボロの浴衣を着た状態で孤独死したそうです。
その後、新たな住人があの家にやって来ますが、そのたびに成仏できない老人が取り憑きます。そして事件を起こさせていたそうです。
霊媒師いわく「手こずった」そうですが、無事にカズヤは元に戻りました。
ただし、いまでも押し入れは直視できないそうですが……。
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