胃潰瘍の薬で「寝たきり」に!?

「8位のアバスチンは進行性の大腸がんや肺がんに用いられますが、副作用として血小板が減り内出血しやすくなる。ところが発売時、この副作用の注意書きがなく、2人の死亡が明らかになった昨年末、ようやく副作用欄に加えられました。10位のアリセプトも腎不全、肺炎などを併発した死亡事故が起きています。この2つは国内メーカーが開発したものですが、アリセプトは米国での臨床試験で多数の患者が死亡したとの情報もあります」(厚労省詰め記者)

インフルエンザの特効薬として01年から、わが国で保険適用になったタミフルのケースも記憶に新しい。
05~07年頃、服用した子供の異常行動死が相次ぎ、騒動になった。
「タミフルを服用すると、発熱日数が1日半減ることがわかっています。しかし、服用した人としなかった人では、インフルエンザが重症化して肺炎で入院する割合に差はありません。したがって、体力のある人にタミフルは必要ありません」
こう解説するのは、新潟大学名誉教授(医学博士)の岡田正彦氏。
同氏は、「無駄で危険な医療+治療45」シリーズの第2弾として12月19日に発売される書籍『病院の処方薬はこんなに危ない! ダマされないための完全お薬ガイド2015』(双葉社)で、前出の近藤氏と同じく、「危険な薬」について証言している。

岡田氏は、他にも「危険な薬」の具体例を挙げる。
「胃潰瘍の代表的な薬であるPPI(※表9位のタケプロンもその一種)は確かによく効きます。しかし、注意書きには『7日以内、または8週間以内の使用に限る』(病気によって異なる)と明記されています。というのは、このPPI、長期服用すると体内のカルシウムが溶け出し、骨粗しょう症になって骨折のリスクが高まるからです。それにもかかわらず、長期にわたって処方されるケースは珍しくありません」
高齢者の場合、骨折から寝たきり、というコースをたどりかねない。
「糖尿病薬に関しても疑問があります。まず食事や運動の指導をして、効果が見られなくて初めて薬を出すべきところ、いきなり処方するケースが珍しくない。しかも食欲がなく、食事の量が減っているのに薬を飲むと、血糖値を下げすぎ、死亡率が高まることがわかっています」(岡田氏)

前出の牧氏は、近年、活況を呈する心療内科における抗精神病薬の処方に疑問を呈する。
「カウンセリングが重要なのに安易に薬を処方する。それも海外では1、2種類しか出さないのに、わが国では7つも8つも出す。これでは、かえって症状を悪化させますよ。しかも、死亡率が高まることもわかっているんです」
なぜ、そこまでして「危険な薬」を処方するのか?
牧氏は、こう見る。
「製薬会社からの仕入れの値段と、患者に販売する際の差益である薬価差益は、現在では平均5%ほどで、昔のように大きくない。しかし、儲かることに変わりはなく処方箋料も入る。薬を処方すればするほど、より儲かるわけです」
一方、岡田氏はこう指摘する。
「大学病院や研究機関には寄付金として、また、医師個人には講演会や学会を通じて製薬会社から有形、無形の支援がなされています。そのようなしがらみがあれば、薬の悪口は言えないし"まあ使ってみようか"となっても不思議ではありません」

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