「現在、日本は歯科医師過剰という大きな問題を抱えています。歯科医師数は10万人を超えており、診療所の数も約6万9000。コンビニが約5万5000店ですから、それよりも多い。歯科医が増えても患者が増えるわけではないので、今、歯医者は儲からないんです。実際に、歯科医師の約2割が年収300万円以下という統計もあります。そうした理由からか、コスト削減のために雑な治療をしたり、診療を長引かせるために手抜きをしたりするなんて話も、よく耳にします」(医療専門誌記者)

 前出のA氏も、そんな事例を目の当たりにしたことがあるという。「私のところに来る患者さんの中には、以前に別の医院で治療した歯に詰め物のセメントがついたまま“人工歯石”状態になっていた方や、歯石がびっしりついたままの歯に被せ物がしてある方も多いです」

 このような話を聞くと、もはや歯医者を信用できなくなってしまいそうだが、この先、虫歯にならないという保証はない。80歳で20本の歯を残すため、「良い歯医者」を見分けるには、どうしたらいいのだろうか。「過剰な治療を勧める医師は要注意ですね。点数稼ぎのために、すぐ削ったり抜いたりするところは、あまり信用できません」(同)

 この点数とは、保険点数、つまり医療行為の対価のこと。1点につき10円で計算され、高ければ高いほど、かかる金額も高くなる。「高額診療でなくても、スケーリング(歯石除去)を上顎と下顎を必ず2回に分けて行う医院も、点数稼ぎの可能性があります」(同)

 歯石除去の点数は、全顎で256点、片顎だと142点。2回に分けて処置すれば280円分高い。また、それと同様に、やたらと自由診療、つまり保険の利かない処置を勧めてくる歯科医師も、気をつけたほうがいいらしい。

「たとえばインプラント(人工歯根)。歯茎にネジを埋め込み、そこに人工の歯を被せる治療ですが、歯科医にとって、かなりオイシイ治療なんです。1本あたり数十万円ですから。ただ、ブームになり始めたのは10年ほど前ですから、大学で教わっていない医師も大勢います。そんな医師が、インプラントの材料メーカーが開く講習会に参加しただけで、施術をすることも少なくないのが現状です」(前出の専門誌記者)

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