■肥満のリスク…その典型が沖縄県

 ともあれ、がん県民性を分析するうえで、食生活との関係はやはり見逃せない。肥満も、注意が必要だ。「肥満が、肝がんや大腸がんのリスクを高めることは、医学的にもほぼ確実となっています」(松田氏)

 その典型的なケースが沖縄県だ。肺がん、胃がんの死亡率は46位と低いのに、大腸がんだけはワースト2位。この極端な偏りは、まさに肥満が原因と言える。「加工肉を食べると大腸がんのリスクは増すといわれますが、沖縄県は消費量がそれほど多くない。なのに、肥満度を示すBMIが男女とも非常に高い数値なんです。これは、全体的な食生活の欧米化が影響しているように思われます」(前同)

■糖尿病が多い“うどん県”こと香川県

 また、糖尿病とがんも密接な関係にある。「糖尿病を患っている人は、肥満や運動不足といった要因を取り除いて分析しても、健康な人に比べると、全がんで1.2倍、血糖値を下げる役割を負う肝臓やすい臓のがんには、2倍弱もかかりやすいのです」(同)

 糖尿が多いのは、ご存じ“うどん県”こと香川県。うどんの消費量はダントツで全国1位であり、2008年の糖尿病受療率も全国ワースト1位だった。「やはり、炭水化物の摂取量が多い。加えて、香川県をはじめとする四国は全体的に一日の平均歩数が少ないのです。四国に限らず、車社会になってしまった地方は、運動不足になりやすいですね」(牧氏)

■熱い飲食物にも要注意

 これからの季節に気をつけたいのは「熱い飲食物」。症例が少なく表には反映しなかったが、これも、あるがんのリスクになるという。「奈良県は全国的に見ても罹患率は低めで死亡率も低く、さらに喫煙率も全国で一番低いのですが……なぜか食道がんは多いんです。毎朝、アツアツの茶粥を食べる奈良の生活習慣が食道を傷つけている可能性があると、行政も真剣に考えているようです」(松田氏)

 とはいえ、これは「南米などで熱いマテ茶を飲んでいる人に食道がんが多い」という統計がもとになっているにすぎない。一つの事象だけが直接の原因と断定できないことは注意しておきたい。「ただ、がんリスクは“がん要因に継続的に触れること”で高まります。一日ならともかく、喉が火傷するほど熱いものを日々、食べ続けるのは、控えたほうがいいでしょう」(前同)

 また、食道がんには飲酒の習慣も大きく関係する。上位を見ると、東京、新潟、高知、秋田、青森など“飲兵衛県”が上位を占める。毎日の過度の飲酒は避けるべしということだろう。

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