■コーヒーは肝がんの予防に効果があるとされるが…

「酒=肝臓」のイメージもあるが、実は肝がんには、それ以上に大きな要因がある。「実は、肝がんの92.1%が肝炎ウイルスなどの予防可能要因なのです。肝炎の流行を経験した60~70代より下の世代は、適切な予防で肝がんリスクが極端に減ります」(前同)

 過去に肝炎が流行した九州地方、そして“地方病”と呼ばれた日本住血吸虫病(現在は撲滅)の大流行を経験した山梨県では、今でも肝がんも多い傾向。だが、これも時代が進むにつれ、減っていくとみられる。コーヒーも肝がんの予防に効果があるとされ、コーヒーの消費量が全国一の京都府では確かに肝がんが若干少なめだが、直接的な影響は、ウイルス予防に比べるとごくわずか。やはり、一にも二にも予防なのだ。

■“死なない長野”の秘密とは!?

 では最後に、がん死亡率が低い地域を見ていこう。最下位は長野県。堂々の“がんで死なない県”だ。「塩分摂取量も多く、罹患率は男女とも高いのですが、死亡率が非常に低いんです。理由として考えられるのは、長野では昭和20年代から地域の健康づくりを担う“保健補導員制度”が確立されていること。現在も1万人以上の補導員が活動しているのです」(松田氏)

 住民と医療の距離が近く、ネットワーク化が進んでいるのは、青森県と対照的だ。「結局、がんは早期発見できるかが、生死の境目。体調が悪いと感じたとき、すぐに検診を受けられる環境や意識があるかどうかで、がん死亡率も変わってくると思います」(牧氏)

 拠点病院が多い、医療機関へのアクセスがいい、地域のがんのデータ収集の歴史が長い――といった“優良県”は、他に宮城県、山形県、静岡県、愛知県など。このように、地域によって罹患率や死亡率は大きく変わる。だが、本質的に重要なのは、場所ではない。「あくまで傾向として、がんの特徴を知ってもらいたいのです。がん死亡率が高い地域には必ず、なんらかの理由がある。それを知ることで、予防や早期発見に対する意識を高めていただきたいですね」(松田氏)

 今後、この調査の精度もより高まっていくはずなので、そこでリスクとされているものを生活の中で意識するようにしてみたい。どこに住んでいようと、心がけるべきは、がんで死なない“暮らし方”なのだ。

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