乃木坂46「個人PVという実験場」
第18回 個人PVに現れる「都市」4/6
■ディストピア的世界の東京
過去3回の更新では、乃木坂46の個人PVに登場する〈東京〉の風景を確認してきた。川村真洋や桜井玲香の初期個人PVは、「旅」というテーマに導かれつつ、ひんやりとしたビル街としての風景、あるいは多数の有名観光地を周遊できる土地としての風景など、この都市が見せるいくつもの顔を切り取ってきた。
また、和田まあや主演の数年にわたる個人PV群では、ときに彼女自身の上京と重ね合わせられながら、無数の人々が集い息づく場所としての〈東京〉が、さまざまな角度から描写されていた。
それらは、物語レベルでは虚実の水準はまちまちであれ、おおよそにおいて現実世界における今日の東京を舞台としていた。一方、〈東京〉は皆が日々、直接的・間接的に数限りなく目にする土地であり、またあまりに多くのコンテンツの舞台となっているだけに、その中にはしばしば、現実には生じたことのない虚構のイメージが託されもする。
たとえば、7枚目シングル『バレッタ』収録の井上小百合個人PV「よせてはかえし」で描かれるのは、ディストピア的世界に置かれた東京である。
https://www.youtube.com/watch?v=paI1fwcXbo0
(※井上小百合個人PV「よせてはかえし」予告編)