■「“天井から水”投稿」削除の怪‼専門家の分析は?

 2月12日までに、距離スキー女子スプリントのフィンランド代表・カトリ・リリンペラ選手(28)が、インスタグラムのストーリーズに選手村の天井から漏水する様子を「HELP!」(助けて!)というメッセージと共に投稿した。通常24時間で自動的に削除されるインスタグラムのストーリーズの投稿なのだが、今回の投稿はわずか数十分のうちに削除、閲覧できない状態になった。

 だが、SNS上ではその投稿は、瞬く間にスクリーンショットが拡散され、建物の天井に設置された照明や防犯カメラ近くから水が噴き出し、床が水浸しになっている様子が確認できるのだ。

 アメリカの大手メディアFOX Sportsでは、「リリンペラ選手は中国当局から投稿を削除するように要請された」と報じている。リリンペラ選手は、中国当局が投稿の削除を要請するメッセージのスクリーンショットも投稿していたようだが、現在その投稿は確認できない。

 前出の井上氏はこう語る。

「基本的に中国国内から投稿したものはすべてAIによって検閲されています。2021年度に中国当局が発表したところによると、その判別精度は91パーセント。特に今は、オリンピック関連や、新型コロナウイルス感染症、米中関係や中台関係に関するネガティブな投稿は優先的に政府や公安警察に報告されているのではないでしょうか。聞いた話では、最短で投稿から10分ほどで”削除要請”が来ることもあるそうです」

 現在、日本人選手が大舞台に臨んでいる中国では、24時間、すべてのネット投稿がAIによって監視されているというのだ。また、リリンペラ選手の投稿が”削除された”と見る向きの報道について、井上氏は、

「インスタグラムなど、中国国外のサイトの投稿を削除することまではできないと思います。リリンペラ選手が今回ストーリーズに投稿し、すぐに“消えた”ものは、やはり選手が自主的に削除するように、当局から”削除要請”など何らかの形で圧力があったと考えるのが自然でしょうね」

 北京五輪の閉幕は2月20日。3月4日にはパラリンピックが開幕する。まだまだ大きな事件が起きてしまうのだろうか――。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4