■極上のBEST3は!?

 まず第3位は、初ガツオと同じく、これから旬を迎える愛知県の生トリガイの寿司。

 トリガイは10センチほどの大きさの二枚貝で、砂に潜る際に使う“足”と呼ばれる食用部分が鳥のクチバシに似ているため、その名がついた。

「全国でも有数の産地である三河湾では、大粒のトリガイが水揚げされます。3月に旬を迎えるため、愛知では古くから春の風物詩として親しまれてきました。地元のお寿司屋さんでも、広く提供されていますよ」(同)

 ご当地寿司ならではの醍醐味は「生」。生トリガイの刺身は現地でしか食べることができないという。

「通常、トリガイはボイルして出されますが、生で食べると食感が段違いなんです。ボイルがグニグニしているのに対し、生は弾力がありながらもシャキッと歯切れがよい。サラリとした上品な甘みを感じることができます」(同)

 第2位には、石川県の香箱ガニの寿司が選出された。香箱ガニとは、メスのズワイガニのこと。小ぶりながら身詰まりが良く、多くの食通に好まれてきた、北陸を代表する名物だ。

「カニの外子と内子(甲羅の内外にある卵のこと)、そして身を使った三位一体の軍艦巻で楽しまれています。カニみその濃厚なエキスと、卵のプチプチ食感、ねっとりとした卵のうま味が詰まっていて、ぜいたくな一貫です」(同)

 カニと言えば、やはり高級品のイメージが強いが、お手頃価格でも食べることができるという。

「一般的な寿司屋さんでも食べられますが、地元の回転寿司店なら600円前後で味わえます。ぜひ、探してみてください」(同)

 そして、堂々の第1位に輝いたのは、北海道のシシャモ寿司。シシャモがナンバーワンと聞けば、意外に思う人もいるだろう。しかし――。

「ふだん、我々が親しんでいるシシャモは、厳密に言うとシシャモではありません。北海道の鵡む 川流域で獲れる“本シシャモ”こそが、本物のシシャモです。北海道の限られた地域で、限られた時季にしか食べられない、幻のお寿司と言ってもいいでしょう」(日比野氏)

 実は、国内で広く流通しているシシャモは、正確には「カペリン」といい、本家本元とは似て非なる別種。その味にも天と地の差があり、本シシャモのうまさは、寿司通である日比野、米川両氏が、毎年わざわざ現地まで赴いて食べるほどだ。

「シシャモは小魚なので、身から水分が抜けるのが非常に早く、新鮮なものでないと刺身で食べられません。獲れたてのシシャモは身が透き通っていて、ふくよかなうま味と、繊細な甘みを持っている。一度食べたら忘れられない、極上の寿司なんです」(米川氏)

 各地で受け継がれてきた「ご当地寿司」。今回の記事をきっかけに、各地の名物に挑戦してみてほしい。

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