■長くない脚に感謝
ただ、この作品以降、たくさんの時代劇に出演させていただけるようになりました。織田信長をはじめとする実在の人物、そして鞍馬天狗や桃太郎侍などの架空の人物を80役くらい演じました。
歴史上の人物を演じるときは、その人物について、できる限り勉強します。本を読み、歴史家など専門の方からお話をうかがい、その人物が生きた土地に行って空気や太陽の光を自分の中に取りこみます。
そんなことを続けているうちに、私は歴史の面白さに魅了され、すっかりトリコになりました。そこから、お城、刀、書と興味の範囲が広がっていき、人生が豊かになったと感じています。だから、長くない脚に感謝しなければいけませんね(笑)。
日本の「芸」の歴史を知ることも、とても面白いですね。2020年から、NHKで『にっぽんの芸能』という番組の司会をやらせていただいています。毎週、いろいろな古典芸能を分かりやすく紹介する番組なんですが、これがもう非常に楽しい!
名人の方がスタジオに来てくださったり、若手の芸が見られたりと、私にとっては趣味と実益を兼ねた素晴らしいお仕事なんです。
古典芸能も、歴史も、知れば知るほど興味深く、もっと知りたくなる。もう、キリがありませんね(笑)。
その一方、俳優として今、興味があるのは“悪役”です。『桃太郎侍』など、正義の士は数多くやらせていただいて来ましたが、正義が際立つのは良い悪役がいてくれてこそ。
私は、善も悪も両方できてこそ初めて“俳優”だと思っています。そういう意味でも、今の私だからできる悪役というのは、今後やってみたい役の一つ。「高橋英樹」という俳優を育ててくれたすべての方々への恩返しも含めて、ぜひお見せしたいですね。
高橋英樹(たかはし・ひでき)
1944年2月10日生まれ。千葉県出身。1961年に日活ニューフェイス5期生として日活に入社し、映画『高原児』でデビュー。以降、特に時代劇を中心に数多くのヒット作に出演。代表作として、映画『男の勲章』シリーズ、ドラマ『桃太郎侍』(日本テレビ系)、『三匹が斬る!』(テレビ朝日系)、NHK大河ドラマ『国盗り物語』『翔ぶが如く』などがある。現在は、バラエティ番組でも活躍中。
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